2010年天皇賞(秋)の予想とレース回顧

レース前の見立て

前日までの台風の影響で、渋った馬場で行なわれることが決定的になった。しかし、雨は止んでおり、レース前に再び降ることはなさそう。東京競馬場の芝コースは、雨上がりで乾きかけの良〜稍重だと直線で内を通った馬が伸びる傾向が顕著だから、天皇賞の前に行なわれるレースで内伸び馬場かどうかを確認しておく必要がある。はたして、天皇賞前の芝3レース(第7、第8、第10レース)はいずれも先行馬&内からチョイ差し馬で決まり、いつもどおりのトラックバイアスを基に予想することにした。同時にその3レースとも父サンデーサイレンス系(SS系)のワンツーだった。


まず実力は1頭抜けているブエナビスタを本命に。3歳までは迫力のある末脚がトレードマークだったが、横山典騎手とパートナーを組むようになって、先行しても強いところを見せている。スミヨン騎手だから先行〜中団につけるだろうし、内枠にも恵まれ「勝ったも同然」とみて、3連単1着固定。


対抗はアーネストリー。昨年秋から順調そのものだし、先行するのが確実で、トラックバイアスも味方につけられる。ただし、宝塚記念3着や重賞3勝はいずれも直線の短いコースであり、東京競馬場の長い直線でどれだけ伸びるのかまだはっきりしていないため、何かに差される懸念もあって、3連単の2着または3着付けにした。


ネヴァブションは、日経賞(2007年)、AJCC(2009年、10年)と中山で重賞3勝しているが、ジャパンカップでも7着などがあって、さらに2007年に東京芝2000メートルのオープン戦、白富士ステークス勝ちがあり、イメージと違って東京でも走れるから、「東京だからと人気薄になるときに馬券を取りたい」と前から思っていた。去年のジャパンカップでも馬券購入していたし(10着)。東京7レースで同じ父マーベラスサンデーのユメノトキメキが1着していたのもちょっと心強かった。


1番ショウワモダンは「気合不足」と一旦は出走回避を表明しておきながら、台風の進路から重馬場で行なわれる可能性がでたことで、一転出走してきた。出走までのフラフラした経緯と、富士ステークスから連闘というその年の安田記念馬らしからぬローテーションとで、秋天に出走してきた安田記念馬はほぼ必ず買っている私でもまったく買う気せず。11年前の今日、99年10月31日に行われた天皇賞(秋)で3着した父エアジハード(同じ安田記念勝ち馬)と同じ馬番であることに、オカルトチックな気配を感じてすこし気になったのだが(笑)


春秋連覇を狙うジャガーメイルは内枠で、母父サンデーサイレンスであることは今日の馬場に合いそう。ただ、下り坂で加速できる京都の芝外回りコースでないと加速が難しそうで、内で馬群をさばく必要がある今日の馬場状態でどこまでという気も。


他に父か母父がSS系では。シンゲンは去年骨折しながら5着、昨年に比べて出走メンバーの軽くなった今年なら2、3着を狙える。出走18頭中、唯一のサンデーサイレンス直仔アクシオン武豊騎手が騎乗。枠順から見ても後ろに下げ、外を回して「末脚に賭ける」乗り方をするだろうが、今日の馬場にはまったく不向きなので切る。ゼンノロブロイ産駒ペルーサは、このメンバーでは一番SSらしい瞬発力を持っているが、2戦連続出遅れで、外から追い込んで来れる馬場でもなく、人気していることを考えて買わないと決めた。スマイルジャックは実力不足だが、内から先行するオウケンサクラエイシンアポロンのおかげで、内の比較的前で競馬できそうで買うことに。シルポートは完全に格下、トウショウシロッコはスピード不足、ヤマニンキングリーは成績下降、キャプテントゥーレは外16番枠から先行できても東京がまったく不向きと考えて買わなかった。毎日王冠を勝って望むアリゼオだが、前走は先行しうまく内をすくっての勝利。今日も同じ競馬を出来ればチャンスはあるかもしれないが、出走頭数も増え、大外枠だから厳しい。


SSをもたない馬では。毎日王冠2着のエイシンアポロンは先行できそうでしかも内枠、条件はぴったりだが、ストームキャット系を天皇賞・秋で買うなら、かわりにネヴァブションスマイルジャックを厚く買いたいので、アポロンは買わず。オウケンサクラコスモファントムは何も考えず無条件で消しました。今年は安田記念ショウワモダンを買わないことにしたので、2000mは長いだろうと思いながらも、同レース2着馬スーパーホーネットを押さえることに。

買い目

1着固定ブエナビスタ
2または3着固定アーネストリー
相手ネヴァブション(3番手評価)、スマイルジャック、シンゲン、スーパーホーネット
の計8点買い

レース回顧

前半1000m通過59.1(12.4-11.3-11.6-11.6-12.2)、後半59.1(12.0-12.2-11.7-11.3-11.9)

ペルーサがやはり出遅れる。その数秒後には、普通にゲートを出たアクシオン武豊が最後方まで下げる(笑) 先述の、エアジハードが3着に入った99年の秋天武豊スペシャルウィークを後方待機から優勝に導いているが、そのスペシャルウィーク騎乗時でさえ18頭中14番手を追走させていたのに、内が圧倒的に有利な今日の馬場で、アクシオンを最後方待機させて勝てると思っていたのか不思議でしょうがない。

先頭はシルポート、続いてオウケンサクラキャプテントゥーレアーネストリーらが予想どおり先行する。スマイルジャックも良い位置につけた。ブエナビスタは、最初の3、4ハロンは意外と後ろ(向こう正面10番手)につけていたが、ペースが落ち着いた5ハロン目あたりから徐々に前との差を詰めながらポジションをあげる(4角で8番手)理想どおりの競馬をした。3コーナーでは、ブエナ1着、アーネストリー3着以内はほぼ堅いと思えた。

一方でヒモに買った4頭のうち、スマイルジャックを除く3頭が後方からの競馬に。4コーナーではそれぞれ、ネヴァブション10番手、シンゲン13番手、スーパーホーネット16番手。スパホネはスタミナに不安があったのか仕方がないとして、ネヴァブションとシンゲンは、使える脚の違いを考慮しても、アーネストリーに先着するにはもう少し前につけないとチャンスはない。

直線に入ると、良い手ごたえのスマイルジャックが前のオウケンサクラキャプテントゥーレの外に持ち出そうとするが、一瞬でトップスピードに乗って後ろから伸びてきたブエナビスタにふたをされ、もう一度内に切れ込む。しかしその直前まであったオウケンとトゥーレの間の1頭分のスペースがなくなり、あまり器用な馬では無く一旦前が詰まるとしんどいタイプなので万事休す。

スマイルジャックを交わしたブエナビスタは瞬発力を遺憾なく発揮して、残り300mで先頭に並ぶと、一瞬で抜け出して楽勝。鞭を使わなかったスミヨン騎手はレース後にブエナビスタを「ザルカヴァ級」と称えたそうですが、リップサービスだとは思えない強さで、ジャパンカップ有馬記念も制して牝馬初の秋古馬三冠を獲り、来年こそは凱旋門賞を目指して欲しい。

もう1頭の軸馬アーネストリーは同じく残り300mでブエナビスタと馬体を並べていたが、ブエナの末脚がやはり段違いで最後は3・1/2馬身つけられた。他の馬との比較では良く伸びていたが、G1級相手に勝つにはやはり小回り向きかなという印象が強まった競馬でした。

レースの大勢がほとんど決まったころに後方から猛追したペルーサが2着に食い込む。先行した17番人気のオウケンサクラが4着に粘ったが、ネヴァブションが5着、シンゲンが6着と後方から上位に来た馬も多くいて、意外に前後の位置取りは関係ない展開だったのかもしれない。ただ4角でほぼ同じ位置にいて外に回したアクシオンブエナビスタから1.2秒差の9着であるのに対して、ペルーサは0.3秒差2着。比較的内目を抜けてきたのが良かったとしたら内伸び馬場を味方にしたともいえる。

最終の単勝オッズだとシンゲン8.3倍3番人気、ペルーサ8.9倍4番人気と競っていたが、三連単のオッズを比較すると次のようにけっこう大きな差がついていて、もうちょっと確認しておけば、ペルーサもヒモには買っていたかなあと。今後も出遅れるだろうし、人気のある馬だし、もったいない競馬を続けそうだけど、今回のように軸2頭をきっちり絞れるなら、わざわざ嫌って得するタイプの馬ではないですね(ブエナと同じレースに出る限り単勝を買う気はしないが)。

1着 2着 3着 オッズ
ブエナビスタ アーネストリー シンゲン 36.9
ブエナビスタ アーネストリー ペルーサ 53.6
ブエナビスタ シンゲン アーネストリー 47.2
ブエナビスタ ペルーサ アーネストリー 74.8


15位入線のジャガーメイルは最後の直線で進路を妨害し、18着に降着。その年の春の天皇賞馬が、秋の天皇賞で18着に降着するのは1991年のメジロマックイーン以来でしょう(マックイーンは1位入線)。仮にエイシンアポロンを走行妨害していなかったとしても、ジャガーメイルがそうだったようにシルポートと内ラチの間にスペースがなく、アポロンも上位入線はなかったと思いますが、あの斜行はダメです。ただ、下り坂がなくてもよく伸びていて東京競馬場のG1戦でも問題なさそう。


とにかくブエナビスタの強さが目立った天皇賞(秋)でした。菊花賞馬ビッグウィークは今年もう出走しないようですが、ダービー馬エイシンフラッシュ皐月賞ヴィクトワールピサらも加わるジャパンカップでも堂々主役として迎えます。